問題を悪化させ、放置しているのはだれか~人材派遣と国・産業界

  1. TOP
  2. 労働者側がどんどん不利になるわけ
  3. 人材派遣と国・産業界

人材派遣への規制緩和で行き着くのは、消費者全滅の日本


派遣への規制緩和は産業界が要求し、国はいわれるままに受け入れている


人材派遣は、戦前は「人入れ稼業」「周旋屋」と呼ばれていました(今の行政の用語では「労働者供給事業」です)。そのころは職業紹介との区別ははっきりとはついていませんでした。

特に労働者供給事業は、中間搾取や強制労働の温床になっていたので、戦後間もなくGHQの手により廃止されました

そのうち、アメリカから人材派遣のシステムが入ってきました。最初は外資系企業が利用するぐらいでしたが、次第に日本企業にも広がりました。

労働者供給事業とほとんど違いがなく、警察などは何度も取り締まりを検討しましたが、実際には目立った対応がないまま放置されました。

すでに広まってしまった人材派遣を追認する形でできたのが、昭和60(1985)年の「労働者派遣法」です。

当初、いくらかは労働者を保護するための工夫がされました。ですが、何度も改正され、そのたびにどんどん労働者側が不利になっています。

どこにもスキル・経験を持った労働者がいなくなった


「特段のスキルをない人を、安い時給で買いたたく」という日本流の人材派遣が広がると、企業にもマイナスの面があります。

まともなスキルと経験を持った労働者が減ってしまうのです。途中採用で探そうにも、よその企業も人材を育てていないのですから、どこにもいません。これが国中で起きているのですから、産業界全体で労働者の質が落ちるのは当たり前です。

ですが、そんなことはおかまいなく、どこの企業も目先の人件費カットを目指し、正社員を減らし、派遣社員の比重を高くしています。

派遣社員化は「所得倍増計画」の逆回し


かつて国が推し進めた政策に「所得倍増計画」がありました。

昭和36(1961)年にスタートし、「10年間で国民の所得を倍にする」というものです。実際には10年待たずに、この目標は達成されました。

給料(所得)がアップする→購買力が上がる→企業やお店の売り上げが伸びる→従業員の給料がさらにアップする

こういった好循環で、景気がどんどんよくなりました。「高度成長期」と呼ばれた、驚異的な経済成長を支える柱のひとつだったのです。

今、国中で進んでいる、「正規雇用(正社員)を減らし、非正規雇用(パート・アルバイト、派遣社員、契約社員)を増やす」というのはまったく、所得倍増計画の逆回しです。

ボーナスなし・安い給料、将来の雇用の保証なしの人(非正規雇用)が増える→購買力が下がる。将来が不安でお金を使えない→企業やお店の売り上げが減る→さらなる人件費カットが図られる

負のスパイラルに陥っているのが今の日本です。

この影響はお客さんが国内にいる産業、つまり「内需産業」から出始めます。

「うちは外需産業。海外を相手にしているから、国内の消費者がヘタっても大丈夫」でもありません。スキルと経験を持った労働者が減りますから、日本発の新しいアイデアや技術が生まれません。「国際競争力が下がる」ということです。

そもそも、ジリ貧の国から、海外と競争できるようなものがでてくるはずがありません。

産業だけではなく、文化も同様です。今、なんとかやっていけているとしても、それは「過去に蓄積した遺産で食っている」というだけです。何年かのタイムラグがあって、その後に影響ははっきりするでしょう。

すでに……物が買えない、結婚できない、結婚しても子供を育てる余裕がない……そんな国になってしまっている


非正規雇用化が進むと、懐に余裕のない人が増え、物が売れなくなるだけが悪影響ではありません。

正社員の場合、定年まで雇用が保証されています。実際には途中で退社する人もいれば、会社が倒産してなくなってしまうこともあります。ですが、「つもり」としては、60歳ぐらいまでは大丈夫と考えているはずです。

これに合わせて、「○歳までには結婚したい」とか、「子どもは○人欲しい」「マイホームを持とう。ローンは○年で返済する」といったことを考えるはずです。

一方、パート・アルバイト、派遣社員などは、ほんの数か月か数年しか雇用が保証されていません。その後には、どんな仕事をしているか、給料はどのくらいかわかりません。「職に就けないでいる」も想定しないといけないでしょう。

これでは将来の計画が立てられません。

若い人ならば、結婚したくてもためらってしまうでしょう。すでに結婚している人ならば、子どもを持つのが不安でしょう。当然、人口はどんどん減っていきますし、すでに少子化は深刻です。

長期のローンも組めません。20年払い30年払いといった住宅ローンなどもってのほかです。思い切って銀行などに申し込んでも、非正規雇用者では審査を通らないでしょう。

物が売れなくなり、企業の国際競争力がなくなり、将来が不安な人が増え、結婚できない・子供が持てないという人ばかりになり、人口はどんどん減っていく……これを「国が滅ぶ」といいます。

今、日本はその坂道を転げ落ちている最中です。

20.人材派遣と国・産業界
    それでも人材派遣会社を利用するなら

    「求人内容と実際の仕事内容が違う」などのトラブルは、「どうせその程度のもの」と割り切る


    あまりにひどい派遣先に当たったら、法律を使って堂々と退職する。基本となる法律は目を通しておく
    非正規(パート・アルバイト、派遣社員)から正社員になるには

    非正規雇用は長くは続けない。20代で一度は正社員とならないと、新人教育を受ける機会を逃す


    就職サポートは担当者次第。業者の評判がいい悪いには関係なく、ハローワークまで含めて、信頼できそうな担当者を探す

    コメント

    よく読まれている記事

    人材派遣の求人広告。「簡単な検査」「仕分け作業」はウソと思った方がいい

    パート・アルバイトはしょせん「手伝い」。雇う側も働く側も忘れていないか?

    人材派遣の求人の仕事内容にウソが多い理由

    少しでも手間をかけたくない相手が、派遣社員

    3直2交代・4勤2休の具体的な勤務スケジュール表と、そのメリット・デメリット