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バイトなら応募がないが、人材派遣ならば来る」のは、派遣会社がダマして連れてくるから
私がこのサイトで繰り返し指摘していることに……
事業者が人材派遣を利用するのは、「正社員より安い」「首を切りやすい」だけではない。「自分のところの正体がばれると応募がない。派遣会社に代わりにダマしてもらって、人を連れてきてもらう」
……というのがあります。
まさしく、この状況が新聞ネタになっていました。
【これだけ買い手市場でも、バイトが敬遠する飲食・介護】
記事は2013年11月13日付の日経電子版の『飲食・介護で派遣広がる バイトやパート集まらず』。
飲食店や介護施設が接客や介護の現場に派遣社員を活用する動きが広がっている。飲食や介護分野はパートやアルバイトなどで現場の人員を補完していたが、時給を上げても人手確保が難しい状況。アルバイトに比べ割高な派遣の活用を迫られており、大手派遣各社への求人数は前年を4~5割上回っている。
人手不足の理由として、飲食業界は……
「都心部で飲食店の新規出店が続いているが、オフィス街など住人が少ない地域はアルバイトの応募も少ない」「若者が短期の働き口を選ぶ際に店の雰囲気や店長との相性を重視」
介護業界の方は……
「労働条件が厳しく退職者も多い。働く側も人間関係などのしがらみの少ない派遣を選ぶ人が多い」
バイトが集まらない理由とされている内容は、ストレートに表現してしまうと「既に悪評が立っていて、バイトの求職者が寄り付かない」ということでしょう。
バイトなど求人広告を本気で見たことのある人ならば、実感がわくでしょう。一生懸命やっている人には申し訳ないけれど、どちらの業界も「激務」&「汚れ仕事」です。それでいて、特別な給料が出るわけではありません。敬遠されるのも無理はないでしょう。
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【「365日24時間死ぬまで働け」ってところ、分かっていたら行きたくないわ】
飲食業界でいえば、この手の代表は大手居酒屋チェーンの「ワタミ」でしょう。「従業員への賃金未払い」「女性従業員の過労自殺」などなど、ブラック企業といえば必ず名前が挙がります。
渡邉美樹社長の言葉として知られるものには、テレビの番組で発言した……
「よく『それは無理です』って最近の若い人たちは言いますけど、たとえ無理なことだろうと、鼻血を出そうがブッ倒れようが、無理やりにでも一週間やらせれば、それは無理じゃなくなるんです」
……があります。
また、部下に対していった言葉としては……
「365日24時間死ぬまで働け」
……が雑誌にすっぱ抜かれました。
一方の介護業界は、少子高齢化を迎えてこれからの成長産業とされています。が、慢性的な人手不足はずっと指摘されたまま、なんら改善がみられていません。
人が来ない上に、いったん就職した人の離職率の高い典型的な職場でしょう。
どちらの業界も、ただでも悪評が立っているのに、今はインターネットが追い打ちをかけます。
バイトの応募を検討している人は、たいていは「○○キッチンって、どうよ」で検索したり、「介護施設△△の家」のHPのチェックぐらいは最低でもするでしょう。
ブラック企業に対しては、みんな敏感になっています。情報の提供者もたくさんいるでしょう。ワタミのような有名企業でなくても、個々の職場に関して、かなりの量の情報が手に入るはずです。
【バイトなら時給850円で済むのを、派遣に1,600円出すって、どう見ても訳あり】
で、日経の記事のまとめとして……
「パート・アルバイトと派遣では派遣社員の時給のほうが3割前後高いこともある。だが求人サイトへの広告掲載料や募集から採用までの期間の短さを考え、派遣社員を依頼するケースが出ている」
……となっています。派遣に切り替える理由がこれだけで済まされています。
これでは「なぜ、こうも簡単に事業者側は、バイトでの募集をあきらめ、派遣に切り替えるのか?」に関して説得力がないでしょう。
一般的に派遣会社を使うと、事業者が支払った代金の7割弱しか派遣労働者には渡りません。労働契約の期間中は、3割強を派遣会社がピンはねします。
「派遣社員の時給のほうが3割前後高い」のであれば、1.3×(10÷7)、あるい1.3×(9÷6)で、事業者はアルバイトを使う時の2倍近い金額を派遣会社に支払っている計算になります。「バイトの時給が850円だとすると、派遣に切り替えると事業者には1,600円かかる。そこから派遣会社が3割強引いて、派遣さんの時給は1,100円」ということです。
【人材派遣での応募では、事前の情報収集はできない】
これならば、たとえ広告掲載料もかかるにしても、さらにバイトの時給を上げる余地はまだまだありそうです。
もう一つ解決しないといけないことがあります。「バイトの応募がないのに、派遣の求人でならば来る人がいるのはなぜか?」
日経の記事では「派遣社員の時給のほうが3割前後高い」がその理由のように見えます。それで解決するならば、時給を「850円」から「1,100円」に上げればいいだけです。これでも派遣会社への支払いよりも500円も安いのです。
そうせずに、派遣に頼るのは「バイトの応募者が来ないのは時給の安さが原因ではない。仕事自体が敬遠されている」と事業者側が気がついている、ということでしょう。
ならば、「派遣で来る人がいるのはなぜか」も答えが出てきます。
派遣会社の求人広告では、どこで働くかが隠されています。応募して派遣会社の面接を受けるまで、「○○キッチン」「介護施設△△の家」の名前は明かされていないのです。
事前にネットで調べるわけにはいきません。「どこで働くのか」が分かった時には、話がどんどん進んでいるのです。
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それでも人材派遣会社を利用するなら
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非正規(パート・アルバイト、派遣社員)から正社員になるには
非正規雇用は長くは続けない。20代で一度は正社員とならないと、新人教育を受ける機会を逃す
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