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- 労働者側がどんどん不利になるわけ
テレビ局も実は人材派遣業者
【産業界側からの要望で、作り替えられてきた労働者派遣法】
戦後、自分のところが抱えている労働者を、仕事先に派遣する労働者供給事業は禁止されていました。これにいくつかの規制をつけ、解禁させたのが昭和61(1986)年に施行された労働者派遣法です。
最初は労働者に不利になり過ぎないように、それなりに考えられていました。派遣が可能だった業種も、当初はソフトウエア開発、ファイリング、財務処理、通訳・翻訳・速記などの専門性の高い13業種だけでした。
ところが、その10年後にはこの業種は倍になり、さらにその8年後には、医療関係などの4業種だけを残して、ほかは全部派遣可能になりました。
これは働く人たちのメリットがあるからではなく、100パーセント産業界側からの要望にこたえたものです。「もっと、自分たちの都合よく使える働き手が欲しい」ということです。
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【深刻な人手不足の労基署】
最初は専門性の高い人がやるものだった派遣社員は、こうやって業種による制限がなくなっていくのと同時進行で、「簡単に雇って、要らなくなったらサヨナラできるチープな労働者」に変わっていきました。
それでも、労働者派遣法に決められたことが、きっちりと守られていれば、もう少しマシな状況になるはずでした。
ところが、労働者派遣法には、罰則らしい罰則はありません。派遣先や人材派遣会社のやりたい放題に近いものになっています。
最も極端な形で現れたのが、平成20(2008)年の暮れに問題になった「派遣切り」です。リーマン・ショックの影響で日本まで不況になりました。まだ契約期間の残っていた人や、そのまま契約が更新されると思わせられていた人たちが、放り出されました。
これらの人数は、厚生労働省が把握しているだけでも、14万人ほどになります。おそらく実際にはその数倍になるでしょう。
特に契約期間が残っていた場合は、明らかに契約違反です。
労働者派遣法違反を取り締まるのは、労基署のはずです。ですが、あまりに職員の数が少ないのもあって、活発に反応することはまずはありません。この派遣切りの時に限らず、実際に相談を持ち込んだ人たちも、たいていは「泣き寝入りさせられただけ」といってがっかりさせられています。
【テレビで人材派遣の問題が採り上げられないわけ】
これほど問題のある人材派遣なのに、マスコミで採り上げられることもありません。
新聞については、あまりの斜陽産業で、もはや取材力も影響力もないせいもあるでしょう。
テレビ局の場合は、もっとあからさまな理由があります。
テレビ局では、本当に番組を作り、放送に乗せるために働いている人は、テレビ局内の正社員ではありません。制作会社(プロダクション)に丸投げしています。現場で働いているのは、その制作会社のスタッフか、人材派遣で送り込まれた人たちです。
テレビ局自体がストライキをしても、放送には全く影響がな区、いつもどおりに放送できるぐらいです。「テレビ局は番組を作る会社ではなく、番組のために働く人たちを管理する会社」との説明がピッタリくる状況です。
そして、形だけは子会社にしていますが、テレビ局自身が人材派遣会社を兼業しています。日本テレビ人材センター、TBSサンワーク、フジキャリアデザイン、テレビ東京ヒューマン、トラストネットワークはそれぞれ東京キー局が100パーセント出資している人材派遣会社です。
現場で働いている派遣社員は、そこに雇われているのです。
自分自身が人材派遣会社であるからには、ニュースであれドラマであれ番組で人材派遣の問題を採り上げると、自分自身の足元を崩してしまうことになるのです。
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