労働者供給が形を変えて復活。今も悪化の進行中~人材派遣の歴史

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労働者供給事業を廃止したのはGHQ。日本の政治家・役人は悪化を許す一方


本当にヤクザがやっていた労働者供給


人材派遣と似たシステムは、江戸時代にはすでありました。お役所言葉では「労働者供給事業」といいます。もちろん、当時はそんな言葉はなく、「人入れ稼業」などと呼ばれました。

これに対し今の職業紹介に当たるものも、当然あります。こちらは「周旋屋(しゅうせんや)」です。

ただ、当時は免許があったわけではなく、そうはっきりとした区別はありませんでした。

労働者供給事業の場合、まず自分のところで人を確保しておいて、必要なところに貸し出す形です。職業としては武家屋敷の下男・下女、中間(ちゅうげん)、町家の下働き、芸妓・娼妓などがありました。

奉公先から支払われた料金から、ほんのわずかの給金を渡す「中間搾取」、体調が悪い人・ほかの仕事に移りたい人を縛り付け・無理やり働かせる「強制労働」などもありました。人の確保のためには、人身売買までやることもありました。

「ヤクザがやる仕事」というのは本当だったのです。

明治には組頭制度


明治維新後、近代産業が日本でも興り、日本にも大規模な工場がみられるようになりました。今度はこの製造現場などに、労働者供給事業が広がります。

「親分」あるいは、「組頭」と呼ばれる人が、労働者供給事業者です。この組頭が住居を確保し、食事も提供するなど、組夫(くみふ)と呼ばれる労働者の面倒を見ました。その代わり給金をピンはねしていました。

組夫は主に、運搬など特別なスキルの要らない補助的な仕事に就いていました。当然、低賃金で、劣悪な労働環境です。港での荷運びなどの港湾労働あたりがその典型でしょう。

時代が下るに連れ、建築作業員、看護婦(看護師)、付添婦、家政婦、運転手、料理人など様々な業種に広がっていきました。

○廃止したのはGHQ

この労働者供給事業が廃止されたのは、昭和22(1947)年の「職業安定法」によります。

この時に日本を支配していたのは、「GHQ」です。労働者供給事業禁止の判断もGHQによります。日本の政治家・役人は、「労働者供給事業のどこがおかしいのかさえわからない様子だった」といいます。

アメリカから入ってきた人材派遣


ところが昭和40年ごろになって、アメリカから人材派遣のシステムが入ってきました。各企業ではすぐに用意できないようなスキルを持った人を、業者から提供してもらう形です。

これを利用したのは最初は外資系企業でしたが、徐々にほかにも広がってきました。

これが禁止されている労働者供給に当たるとの指摘はあり、何度も取り締まりが検討されました。

ところが、産業界からの要請が強く、いくらかの規制を設けて認める方向になってしまいました。こうやってできたのが昭和60(1985)年の「労働者派遣法」です。

その後も、政府はろくに取り締まりもしないまま、違反があると、労働者派遣法を改定で緩め、追認することを繰り返しています。

民主党政権下の規制強化の動きも結局うやむや


唯一逆の方向があったのは、民主党政権時代(2009-2012)です。

2008年に起きたリーマン・ショックの影響で日本でも急に景気が冷え込み、派遣切りが横行しました。それを受けての対応です。

すでに解禁されていた製造業への派遣を禁止し、登録型派遣も禁止する案が出されました。

これはなかなか成立せず、そうするうちに、2012年末、民主党は総選挙でボロ負けし、政権から降りました。

自民党・公明党政権下では再び、労働者の保護よりも、産業界の要請をそのまま受け入れるようになっています。労働者派遣法の緩和も繰り返されています。それは今も続いています。

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