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それは「損害賠償」ではなく、「罰金」。もちろん応じる必要はない
【「損害賠償」にびびる前に、やめる・やめたくなるの理由を確認】
人材派遣会社や、パート・アルバイト先に「やめたい(退職したい)」と伝えた時に、「急にやめられてはこちらは大損害だ。損害賠償を請求する」などと脅される話は珍しくありません。
もし、その仕事がちゃんと「◯月◯日まで」と最初に決まっていたのならば、もちろん最後まで勤めるのが大原則です。
ですが、その「やめたい」の理由は何でしょうか?単に「気が変わった」ならば、もちろん自分の側が悪いです。
ですが、「想像していたよりも仕事が大変だった」といったことで、しかもそれは自分の思い込みから来たことではなく、「約束されていた仕事と内容が違う」であれば、相手の責任です。この場合、やめていいことになっています。
明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる(労働基準法第15条)
また、
契約期間が1年以上のもので、実際に働いた期間が1年を超えている場合もやめることができます(労働基準法第137条)。退職する理由は要りません。「気が変わった」「仕事に飽きた」でも問題ないのです。
この「契約期間が1年以上……」ではないならば、今度は理由次第です。
「体調不良・病気」「引っ越し」「賃金不払い」「労働環境劣悪」「パワハラ」といった「やむを得ない事由」があれば、即座に退職することができます(民法第628条)。
契約期間(労働期間)が決まっていなかった場合も、労働基準法第15条、民法第628条は同じように適用されます。
それに加えて、
退職日の2週間前までに相手に通告すれば、やめることができます。これも退職の理由は要りません(民法第627条1項)。逆にいえば、「やめる」と相手にはっきりと伝えてから、2週間待てば、理由もいわずにやめていいのです。
これらのパターンのどれもが、損害賠償など請求のしようがありません。「退職していい」と法律で決められているのですから。
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【相手は何を「損害」と呼んでいるのか?】
仮に本当に自分の側に一方的に問題があったとして、急に退職することで、いったいどんな「損害」を与えたことになるのでしょう。
おそらくはまともに説明できないことが大半でしょう。ですが、こじつけてでも相手が出してくるのは、次のようなものが典型です。
・店員の勤務スケジュールがおかしくなった。人手不足になった。そのせいでお客の応対が不十分になり、売り上げが減った。(作業員の数が少なくなり、作業がこなせなくなった)
相手が人材派遣会社ならば、このようなパータンもあります。
・あんたが急にやめたことで、派遣先に迷惑をかけた。そのせいで、派遣先と自分のところ(人材派遣会社)の関係が悪くなった。もう派遣の依頼が入らなくなる。
確かに全くのウソでない場合もあるでしょう。
ですが、ここで思い出さなければいけないのが、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員などは非正規雇用の労働者であることです。
給料はまるで自分の時間を切り売りするように時給制です。しかも安く、それだけで生活は成り立ちません。ボーナス・退職金はまったくないか、あっても「寸志」などの名目での形ばかりです。福利厚生も利用できません。長期の雇用も保証されていません。
その引き換えとして、「仕事への責任は軽い」「急に退職したり、勤務にわがままをいう」が許されるのです。
雇用者・使用者側が承知しておかなければいけないのは、「しょせん手伝い程度の存在」ということです。違う言い方をすれば、「急にやめられたくなかったり、仕事に責任を持ってもらいたいならば、ちゃんと人件費をかけて正社員を雇っておけ。時給1,000円や1,500円程度で相手をがんじがらめに縛るなんて厚かましい」ということです。
結論をいえば……
・パート・アルバイト、派遣社員などには、急にやめられて損害が出るような仕事は任せていない。もし、「損害」と呼ぶほどの影響が出たのならば、その仕事に正社員を当てていなかったのが悪い。バイトらに任せるしかなかったにしても、ちゃんと正社員がカバーしていなかったのが悪い
……ということです。
【「損害賠償」と呼んでいるものは、実は「罰金」】
とはいえ、先に挙げた労働基準法・民法のどれにも当たらず、自分の側だけの理由で退職するのならば、「契約違反」ということでの責任はあります。
損害賠償が発生するとしたら、この部分だけです。繰り返しになりますが、「売り上げが減った」「作業がこなせなくなった」は、非正規雇用の労働者が責任を負うことではなく、損害賠償もありえません。
雇用期間の契約違反での賠償額がいくらになるのかは、計算方法が思いつかないのでわかりません。「おそらくは」ということでいえば、「まるまる自分の方(労働者側)が全面的に悪い」となったところで、裁判を起こすなどの手間や費用は、全く回収できないでしょう。雇用者・使用者側にしたら、「騒ぐだけ無駄」だと思います。
中には、「急に退職したら、損害賠償として◯万円とパート・アルバイト、派遣社員の契約書に一項目付け加えてある」といった話は聞きます。
おかしな話です。どんな損害を与え、その額がいくらになるか、まだわかっていないのに、賠償しなければいけない額を決められるわけはありません。
こういうのは、「損害賠償」とはいいません。あえて呼ぶならば「罰金」です。
名前が「損害賠償」であっても、「罰金」やそのほかのものであっても、違法です。契約書を作るときに、相手から説明を受け、自分もそれにハンコを押してあっても無効です。
以上見てきたように、損害賠償は何重にもありえません。
ですが、損害賠償を持ち出してくるようなところは、ほぼ間違いなくブラック企業・ブラック人材派遣会社です。「法律はこうなっています」といったところで、簡単に引っ込むとも思えません。自分だけで対処せず、アドバイスをもらえる人を探しましょう。
候補はいくつか考えられますが、最も現実的なのは、都道府県などが用意している労働相談の窓口でしょう。
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