『ドクターX～外科医・大門未知子～』でシミュレーションする業務請負

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医療の世界でも現実にある偽装請負

『ドクターX～外科医・大門未知子～』が、二話まで終わったところ。ドラマとしては面白い。が、人材派遣&医療の世界のルールをまったく無視している

で、その突っ込みどころ利用させてもらって、人材派遣・業務請負を考えるネタにさせてもらう。

【名医紹介所は「紹介所」か?】

「職業紹介業務」ならば、帝都医科大学付属病院本院からは名医紹介所へは「紹介料」が渡って終わりにならなければならない。病院本院は大門未知子（米倉涼子）を雇い（直接雇用）、給料も直接出すことになる。

が、ドラマの中では、お金の流れは、病院本院⇒名医紹介所⇒未知子になっているので、これは間接雇用。

ストーリーの上では、美知子は病院本院の人間に「首」だの「雇ってやる」などいわれているけれど、雇っているのは名医紹介所。

分かってないね、内科統括部長も外科統括部長も……というより脚本家か。

（C）ピッパ　『ドクターX～外科医・大門未知子～』雇用関係図

また、病院内の仕事上の指示は、「名医紹介所⇒未知子」というのは出てこない。

未知子はあれこれ逆らいはするが、指示は「内科統括部長⇒未知子」だったり、「外科統括部長⇒未知子」になっている。明確に一人に絞れないが「指揮命令者」は病院本院であることは明らか。

以上のことから、どう見ても名医紹介所は「職業紹介業者」ではなく、「労働者派遣（人材派遣）業者」。

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【だいたいあの設定では、医者の派遣は禁止なんだけどね】

もっとも、職業紹介所と人材派遣会社が兼業していることは珍しくない。この場合は、常用型派遣ならば届け出制、登録型派遣ならば認可制である。

が、人材派遣業であるのならば、医療関係は原則禁止。

例外とする規定はある。たとえば「僻地医療」。無医村への赴任ならば、例外扱いになる。

ほかには「紹介予定派遣」。派遣期間の終了時に直接雇用に切り替える前提で始めるものだ。いわば試用期間を兼ねたようなもの。

が、ドラマの設定ではどれも当てはまらない。紹介予定派遣なんぞにしたら、未知子は「一匹オオカミ」どころか、ただの求職者になってしまう。

【手術での業務請負は現実味がない。ならば工場だって同じと思うが……】

が、これをもし、「業務請負」ということにするのならば……と、シミュレーションしてみる。「手術などの際にスタッフを全部、名医紹介所からの人間にしてしまう」ということ。

内田有紀演じるところの麻酔科医は、名医紹介所から来て、美知子を手伝っている。立ち合いの看護婦からなんから、全員をこれにするわけ。

でも、実際に手術室を外部の人間だけで独占して、仕事を進めるなんて不自然……ここにナントカ部長などが入ってきて、指示を与えてしまうと、途端に労働者派遣に代わってしまう。

絵空事のシミュレーションのに思えるかもしれないが、こういうことが常態化しているのが製造工場。「偽装派遣」とか「偽装請負」と呼ばれるのがこのパターン。

手術室が、工場のラインになり、外科統括部長が工場長だか、リーダーになるだけの話。

【実際に病院での偽装請負は摘発されている】

医師では摘発例は、寡聞にして聞かない。が、検査技師の場合は、実際に偽装請負が起きている。請負で行ったはずの病院で、医師の指示で日常の業務をやっていたのだ。

こうやって考えてみると、「ちゃんと業務請負を守れ」というよりは、業務請負というシステムの方が無理なのが分かる。もともと、立場の弱い人間を作り出して、人件費減につなげる方便にすぎないのだ。

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