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簡単に退職できるのに、法律を知らないせいで押し切られていませんか?
【契約期間終了以外にも、堂々とやめられるパターンがある】
非正規雇用、特に人材派遣の場合、自分の方は退職するつもりでも、なかなかすっきりとやめられないことが多いです。
人材派遣会社にしたら、「送り込んだ後はほったらかし。後はいてもらうだけで自動的に派遣料金が入ってくる」というおいしい状況です。それを失わないようにと、あの手この手で引き留めるわけです。
「後任が見つかるまで待ってくれ」を理由にしたり、「『契約更新はしない』といってあったのに、勝手に書類を作って、更新したことにされてしまった」という実例まであります。
受け入れる必要はありません。期間終了ならば、もちろんやめていいです。実はそれ以外にも、ほんの少し条件を満たせば、堂々とやめていいように法律の上で決められています。
【契約期間途中でやめることを保証している法律】
・労働基準法第137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
平成15(2003)年の労働基準法改正でできた項目です。昔からあるものではないので、雇用者側も知らないことが多いかもしれません。
簡単にいえば、
「契約期間が決めてあり、その契約期間が1年以上になっている。そこで働き始めて1年を超えているのならば、いつやめてもいい」ということです。
退職の理由は不要です。「相手が認める・認めない」とかも関係ありません。
「契約期間が決めてある」というのは、まず人材派遣の全部です。もし、「就業条件明示書にない」、「就業条件明示書自体が作られていない」ならば、これ自体がいつやめてもいい理由になります。
また、パート・アルバイト、契約社員の場合も期間がはっきりしていればOKです。ただし、「契約が1年ごとの更新。今はその○回目の途中」などの場合はNGです。契約ごとに期間のカウントがリセットされます。
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・民法第627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から二週間を経過することによって終了する。
「契約期間が決まっていない」という場合、実はそのほうがやめるのは簡単です。
「実際に退職する日の2週間前までに相手(会社、お店)に通告すればいい」ということです。逆にいえば、
「『やめます』とはっきりいってあれば、2週間だけ待てばいい」ということです。
もちろん、これも「◯◯が忙しくなったから」「体調がどうも……」など一切の理由は不要です。
パート・アルバイトの場合、期限があいまいなまま始まってしまっている場合もあるでしょう。ちなみに、正社員の「定年が60歳」であっても、この「契約期間が決まっていない」とみなされます。
・民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
この法律のチェックポイントは、「やむを得ない事由」と「損害賠償の責任を負う」でしょう。
「やむを得ない事情」とは一般的に、「体調不良・病気」「引っ越し」「賃金不払い」「労働環境劣悪」「パワハラ」などがあります。
これにもうひとつ、忘れてはいけないのが、
「今までは非正規雇用だったけれど、よそに正社員として採用された」があります。
パート・アルバイト、派遣社員では普通は生活はまともには成り立ちません。そこから抜けだして、正社員になろうというのは、あまりに当たり前の行動です。これも「やむを得ない事由」として認められるのが普通です。
「損害賠償の責任を負う」は実際に、「今やめたら損害賠償を請求するぞ」と脅されている人もいるでしょう。
その損害として挙げられるのは、「お前がいなくなるせいで、店員の数が足りなくなった。接客のレベルが下がって、お客も減った」あたりが典型でしょう。人材派遣会社ならば、「派遣先に迷惑をかける。そのせいで、自分のところ(人材派遣会社)が派遣先から契約を解除される」もあるかもしれません。
ですが、
この「損害」とは、よほど重大なもので、しかも本人(労働者)側がわざとやったようなものでないと、認められません。
そもそも、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規労働者には、重要な仕事を任せるものではなく、いつやめるかもある程度覚悟しておくのが、雇用者・経営者の常識です。
また、そのようなものだからこそ、労働者側も、「不安定な雇用」「正社員の半分・3分の1の安い給料。ボーナス・退職金もなし、あっても形ばかり」「福利厚生は正社員用であって、非正規労働者には無縁」という条件を受け入れているのです。
「急にやめられるのが嫌ならば、ちゃんと人件費を出して、正社員を雇っておけ」ということです。
・労働基準法第15条
(1)使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
(2))前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
「事前の話と、実際の仕事内容・雇用条件が違っていたら、すぐにやめていいい」ということです。
特に人材派遣の場合、募集では「簡単な検査」「仕分け作業」となっているのが、全くの肉体労働であることも珍しくありません。というよりも、求人広告の仕事内容など、あってないようなものです。
「パソコンを使った事務」だったはずが、「事務所内・便所掃除、弁当の買い出しほか、雑用全部」といった例まであります。
こういった場合、速攻でやめても、労働者側には全く責任はないわけです。
ただし、一点だけ注意が必要です。契約書や就業条件明示書に書かれてあって、あなたもハンを押したのならば、その内容が優先です。
求人広告の内容と、実際の仕事内容などが違っていても、「契約の時に、その違っている内容で承知した」という扱いになってしまいます。
ハンを押すときは、くれぐれも「形だけのこと」と思わないようにしましょう。
【それでも解決しなければ……】
以上は、「法律の上ではこうなっている」という話です。
実際には、なんのトラブルにもならず、「すみません、就職活動をしていて、正社員に採用されました。◯月から向こうで働くことになっています」「それはよかったね。おめでとう」となることもあるでしょう。むしろ、かつてはそれが普通だったと思います。
ですが、今は雇用者・経営者側が自分の側の無理を通そうとすることが増えています。
どうトラブルになろうが、法律の上で、ちゃんと担保されている行動をとるのならば、結局は相手の言い分は通りません。
ですが、対応に困るようなときもあるでしょう。
こういった場合の相談窓口として用意されているのは、次のとおりです。
・ハローワーク(ハローワークを通して見つけた職でなくてもOK。ただし、役に立ったという話は聞かない)
・都道府県・市町村などの労働相談コーナー
・市町村・弁護士団体などが開く無料法律相談(時間的に不十分。また、順番待ちがひどい)
・労基署(本来はここが最も責任を負っている。ただし、慢性的な人手不足で、まともに取り合ってくれない可能性も高い)
・労働組合
「私がトラブルに遭ったならば……」ということでいえば、まずは「都道府県・市町村などの労働相談コーナー」を考えるでしょう。
それでうまく行かなければ、「労働組合」です。組合員以外からの相談に乗ってくれるところもたくさんあります。
見つけるには、Twitterあたりで、「バイト、退職、トラブル、相談」などをキーワードに検索してみればいいでしょう。それでヒットした中から、活動が盛んそうで、メール・電話などでの相談を受け付けているところを選びます。
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それでも人材派遣会社を利用するなら
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あまりにひどい派遣先に当たったら、法律を使って堂々と退職する。基本となる法律は目を通しておく
非正規(パート・アルバイト、派遣社員)から正社員になるには
非正規雇用は長くは続けない。20代で一度は正社員とならないと、新人教育を受ける機会を逃す
就職サポートは担当者次第。業者の評判がいい悪いには関係なく、ハローワークまで含めて、信頼できそうな担当者を探す
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