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「簡単に辞められたくなかったら、正社員を雇っておく」は、雇用者・使用者側の当然の心得
バックレをやってしまった人、バックレをしようかと考えている人が、気になるのが……
①相手が仕掛けてくる電話攻勢を逃げ切れるか
②損害賠償を請求されないか
③業者間に出回っているという“ブラックリスト”に載ってしまって、よその業者にも雇ってもらえない
……といったところでしょう。
これらは派遣社員に限らず、パート・アルバイトでも心配する人もいるでしょう。ですが、特に派遣で多いです。
というのは、派遣の場合、求人内容が全くの嘘であることが当たり前になっています。職場を見てから初めて、「だまされた」と気がつく人がたくさんいます。「逃げ出したい」と思うのは無理のないところです。
派遣社員にとってバックレは、パートタイマー・アルバイター以上に、変な意味で“身近”な問題なのです。
【具体例があるのは、「電話攻勢」だけ】
・損害賠償はビビっている人の話ばかり
この3つ、あきらかな違いがあります。
①の「電話攻勢」は現実にあります。私の周りでもありましたし、ネット上を見れば無数に具体的な話がみつかるでしょう。
が、②の「損害賠償」は具体例を聞いたことも見たこともありません。「そうなるのではないか」とビビっている人の話ばかりです。
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・だれも見たことがない「ブラックリスト」
③の「(業者間でやりとりしている)ブラックリスト」も同様です。「載るらしい」「載ったら困る」というだけで、「ブラックリストを見た」とか「ブラックリストを持っている」という人の話はゼロです。
これだけ、人材派遣会社の「営業さん」たちも暴露話を公開しているのにもかかわらず……です。
まあ、こういった話をしてしまうと、そのうち偽物の営業さんが登場して、「おれは持っている」とでも、いいそうではありますが。
【法務省HPの判例集でも出てこない損害賠償】
・採り上げられているのも、勘違いだったり、具体性がなかったり
損害賠償に関しては、まれに、「損害賠償を求めて、人材派遣会社が裁判を起こした例が1件ある」といったような記述もあります。
が、こういった場合でも、その具体的な内容は書かれていません。中にはあきらかに、「正社員のバックレ(無断退職)」の例と混同しているものもあります。
・一般の人が、「具体的なバックレの損害賠償の例」を知っていることはない
気になったので、法務省のホームページで過去の判例を調べてみました。
「労働者派遣法」「損害」「賠償」「人材派遣」など思いつく限りのキーワードで検索しました。が、「バックレで損害賠償を請求した裁判」は1件も見つかりません。派遣社員関連だけではなく、パート・アルバイトまで含めてもありません。
法務省のホームページも「判例を全部残らずアップしているわけではない」とのこと。「1件もない」というのを証明するのはとても難しいものです。
でも、「法務省HPの判例にない」ことからは、これぐらいは断言していいでしょう……
①「一般の人に知られているような」と限定するならば、バックレが損害賠償の裁判ざたになった実例は全くない
②“バックレの損害賠償”などといっている人も、勝手に頭の中で想像しているだけ。あるいは他人の話を受け売りしたり、尾ひれをつけているだけ。実際に知っているわけではない
【妄想から作り出した話がひとり歩きする】
・バックレが出ても、無反応の派遣先もある
これら以外にも、「バックレをしたためにビビって妄想している人」や「そういった連中をからかいたい人」が、作り出した話がいっぱいありそうです。
たとえば、「バックレが出ると、人材派遣会社の担当者は派遣先から散々文句を言われる」「その人材派遣会社は二度と使ってもらえなくなる」
これも100パーセントそうなるものではありません。
私がいた電子部品工場では、派遣社員が5人連続、初日でバックレました。が、派遣先の方では何の変化もなく同じ所を使い続けていました。
逆にこの人材派遣会社の側で、「これから先、依頼があっても、もうあそこには人を送るな」という話が持ち上がったぐらいです。
・「バックレが1人でたから、その派遣元は使わない」って、早とちり
損害賠償の場合、その損害の内容としては……
そいつがバックレたせいで、派遣先が人材派遣会社との契約を解除する。それにより人材派遣会社に損害が出る。だから損害賠償請求になる
……なんていう話になっているようです。
これももう少し実際に即して考えてみましょう。
もし、10人、20人、それ以上の派遣社員を使っているところがあるとします。そのうちの1人がバックレたといったことで、その他の人間も一気に派遣契約を解約することは有り得ないでしょう。
そんなことをしたら職場が混乱します。
それでも解約するとすれば……
①バックレが出た後の対応が気に入らない
②1人だけではなく、3人、5人とバックレが出た
……などと、よほど怒らせた、あるいは……
③バックレとは全く関係のないところで不満があり、バックレを口実にした
……といった時でしょう。
つまり、「だれか特定の1人がバックレたということで、解約をするようならば、派遣先のほうが異常」です。
また、派遣先の人事担当者がまともならば、「ほかの人材派遣会社に変更したところで、バックレの問題が解決するわけではないかも」ぐらいは考えてみるでしょう。
【派遣社員・パート・アルバイトが「賃金最低・身分不安定」なのは、「無責任でも仕方ない」「簡単に辞めてもいい」との交換条件】
・時給1,000円の派遣社員には、損害が発生する仕事は任せていない
損害賠償が請求される(としている)ほかのパターンとしては……
仕事に穴を開けたので、作業が遅れた。それで損害が出た
……といったものがあります。
ですが、具体的な損害が出るほどの仕事を派遣社員に任せることはありません。ちゃんと正社員を当てているはずです。
派遣社員の給料が安いのは、「重要性のある仕事をしていない・させてはいけない」ということの反映です。時給1,000円とか1,500円で使われている人間が「自分がいなくなったことで、派遣先に損害を与えた」なんて考えるのは“身の程知らず”です。
・「簡単に辞める」のは、経営者側には織り込み済みのはず
「派遣社員・バイト・パートといった人間は、簡単にやめてしまう。いつ辞めるかわからない」というのは、雇う側・使う側にしたら“織り込み済み”になっていなければならない話です。不安定な身分しか与えず、賃金も最低レベルしか払っていないのですから。
「簡単に辞められたくなかったら、正社員を雇っておけ」というのは、暴言でも何でもなく、経営者側が心得ておかなければならない常識です。
・損害の内容が分かっていないのに、賠償金額が決まるわけがない
人材派遣会社の中には、派遣社員との間で、「契約途中でやめたら損害賠償を支払う」と一筆書かせるところがあるようです。
ひどいところになると、「○十万円」と金額まで決まっているとか。
でも、「どんな損害を与えたか」が決まってもいないのに、賠償すべき金額が決まっているなんて、おバカな話です。
こういうのは「損害賠償」ではなく、「罰金」です。この程度の区別さえついていないところが、書面を作っているわけです。こんなものに効力をもたせるなんて、お笑いです。
それに、損害賠償であれ、罰金であれ、そのような取り決めのある契約を結ぶのは法律で禁止されています。
そこはインチキな業者ぞろいの人材派遣の中でも、最低レベルです。もし、そういう話になったら、「法律も守れないようなところで働くのはお断り」とするべきでしょう。
【バックレなんぞ、平気になるほど、まともな社会人・組織人からは遠ざかる】
一方、バックレの経験者の中には、「やってみたら意外に何でもなかった」といった感想を持つ人がいるようです。
さらに「自分は○回やった」と自慢(?)したり、サイト上に「バックレのやり方」なんて公開する人もいます。
バックレなど何回やっても、うまくなっても、「大人社会の一員としてのスキルがアップするわけではない」ことをお忘れにならないように。
「“半端物”かつ“安物”の労働者」で一生を終えたくなかったら、バックレなんぞやるべきではありません。
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コメント
期間満了で終わるのが1番いいのですが、なんかおかしいな?と思い担当者に言ったところ、今度は不履行がつくから辞めれないですと言われました。
正社員が決まったので辞めますと突っぱねたところ、不履行がどうのこうのでこちらも対応を考えざるを得ませんと言われました。
しかもこんな辞め方したら地元にいれなくなりますよ?と言われました。
派遣なんて登録しなきゃよかったと思ったし、担当者の言い方が怖いです
「こんな辞め方したら地元に……」はツッコミどころ満載ですね。「恐喝」として処理したいぐらいです。
まともな人材派遣会社&担当者であれば(そんなものがあるとして)、逆に「おめでとう。よかったね」といってくれる場面です。
まず、気をつけることは、「やめます」は覆さないようにしましょう。いい加減な返事をすると、「口頭でだけども、新しい契約が成立した」となる場合があります。まあ、正社員がかかっているので、ふらつくことはないとは思いますが(^o^)v
気がついたことを数点ピックアップします。
・民法第628条に、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」と決められています。これは正社員・非正規労働者(派遣社員、パート・アルバイト)を問わずです。非正規労働者は生活の自立ができない状態ですから、そこから正社員になるため退職するのは「やむを得ない事由」に当たります。「損害賠償」とあるのが気になるかもしれません。こんなものわざと相手に損害を与えるようなことをしない限り適用されません。
・理由がいろいろ変わるのは、どれも本当の理由ではないし、そのどれもが通用するものではないからです。真に受ける必要はありません。担当者にすれば、「すぐに後任を見つけることができない」「派遣先に説明するのも面倒くさい」といった程度のことです。「それをやるのがあなたの仕事で、それに対してお金が支払われているのでしょう」と、(面と向かっていうかどうかは別にして)理解しておけばいいことです。
・ひょっとしたら「ここでごちゃごちゃしてしまうと、正社員として採用してくれたところの印象が悪くなる」といったことが頭をよぎるかもしれません。ですが、生活をつなぐためにこれまで派遣社員でいた事は何ら問題になることではありません。また、内定がすでに出ているのならば、すでにその会社に雇われているのと同じ身分です。労働契約が成立しています。この程度のことを理由に内定の取り消しはできません。内定取り消しは、「採用の際に提出した学歴がウソだった」「採用が決まった後に重大な犯罪をやらかした」レベルの時だけです。
それで、「実際にはどうするか」です。あくまで「私がその状況ならば……」ということです。後は自己責任での判断でおねがいします。
①「採用が決まった会社が信頼できそうならば、その会社に相談し、会社からも人材派遣の退職を申し入れてもらう」です。あるいは、「会社からの指示に従う」です。
「せっかく採用してくれた会社に申し訳ない。印象が悪くなる」という考え方もするかもしれません。ですが、これこそ組織人の基本中の基本とされる、「報・連・相(報告、連絡、相談)」です。
「自分がどのような状況にあると上司に伝えておく(入社前なので、まだ人事部あたりがその上司役)」&「自分自身で判断をしたとしても、その上司が承知している形で行動に移す」という部下は、上司からするととても安心でき、信頼もできます。
その手順を間違わないようならば、むしろあなたの評価が上がることさえあると思います。
逆は、全くの独断で動いてしまうことです。後で困った結果だけ持ってこられるのが最悪です。
まず、今その会社の、あなたへの窓口になっている人に相談してみましょう。ある程度の規模の会社であれば、法務担当の社員もいます(顧問弁護士が出てくるほどの話ではない)。法律の上で保証されていることをやるのですから、何の問題もなく片付けてくれるはずです。
②「採用してくれた会社が、今ひとつどの程度の信頼度かわからない。法務関係の社員もいないかもしれない」のならば、次は公的な相談窓口か、それに近いものです。
最初は都道府県などが設けている労働相談の窓口がいいでしょう。「イマイチは頼りになりそうにない」というのであれば、非正規雇用者にも窓口を広げている労働組合です。いくつかキーワードを決めてググればヒットするでしょう。
あと、そのやり取りはメモをとりましたか?
電話でのやり取りであっても、もちろん、その時のやり取りが再現できるように書き留めておきます。もし、面談での事ならば、少々わざとらしくても目の前でノートを広げ、相手の話を遮ってでもしっかりと書き留めていきましょう。
で、タイミングを見て、「わかりました。労基署(労働基準監督署)かどこかに相談してみます。それまで返事を待ってください」で話を打ち切ります。
どこに相談するにしろ、相手に突きつけるにしろ、記憶に頼っては力強さはありません。こういった交渉事は「言質をとる」ということが大事です。「メモもとらないようでは、舐められても仕方ない」ぐらいに思っていたほうがいいです。