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現実にやっているのは「募集広告代理業」。なのに「ピンはね」がずっと続く
【派遣社員自身のほぼ半分の金額を受け取り続ける人材派遣会社】
いまさらですが……職業紹介会社と人材派遣会社は違います。
職業紹介会社の場合、人が欲しい企業やお店側に、求職者を紹介し、企業・お店側がその人を採用すれば、仕事は終わりです。
料金もその時だけ、企業・お店側から支払われます。1回限りの「成功報酬」ということです。
一方、人材派遣会社の場合、派遣先からは派遣料金が支払われ、そこから人材派遣会社は自分たちの取り分を抜きます。派遣社員の給料は人材派遣会社から支払われます。
派遣社員が働いている限り、ずっとこの中間マージンを取り続けます。なぜ、それが許されるのかといえば、「送り込んだ後も人材派遣会社のやる仕事があるから」のはずです。
中間マージンは30パーセントか、それよりもやや多いのが一般的です。派遣先が支払っているのが時間当たり1,500円ならば、人材派遣会社は500円を取り、派遣社員には1,000円が支払われる……ぐらいの比率です。
人材派遣会社の取り分は、派遣先で働いている人の半分ということですから、決して小さい割合ではありません。
もし、「やる仕事」もまったくやっていないのに、中間マージンを取り続けているのだとしたら、それはまったくの「ピンはね」です。「最初にうまいこと『口利き』をやった。それで『金づる』をつかみ、後は放っておいてもお金が入ってくる」ということです。
現実には、「やる仕事もまったくやっていない」ばかりです。
「なぜ、こんな理不尽なシステムがまかり通っているのか」といったところです。人材派遣のシステム自体に大きな問題もあるでしょうが、それをさらにひどいものにしているのは、本体の人材派遣とは違うものが当たり前になっているせいです。
【派遣先企業にすれば】
・本来は
企業にすると、正社員を雇うと、いろいろな責任が伴います。もっとも大きいものだけ挙げると、「特別な理由がない限り、定年まで雇い続けなければいけない」です。
なのに、一時的に人が必要になることがあります。補助的な、だれでもできるような仕事を任せるのであれば、バイトやパートでも募集すればいいです。人材派遣会社の出番はありません。
そうでなはくて、特別なスキルや経験を持った人が急に必要になる場合があります。すぐに身につくようなものでないのならば、今いる社員に研修などしても間に合いません。
また、その種の人がずっとこの先々まで必要ではないのならば、どこからか探してきて、正社員として途中入社させるのもためらわれます。
そういった時に、頼りにするのが人材派遣会社です。
人材派遣会社の方ではそれに備えて、スキルや経験をもった人を確保しておきます。場合によっては、自分のところで訓練し、企業からの求めに応じられるようなレベルにまで引き上げておきます。
折りたたむ
・現実は
実際に企業側でも、派遣で来る人には、スキルや経験を持った人に来てもらいたいでしょう。実際にそういう条件を出すところもあるでしょう。
ですが、それで本当に来てもらうには、時給1,000円や1,500円では無理です。派遣社員側にすれば、「スキルや経験の分の評価がまったく入っていない」「常に仕事があるわけではない上に、時間当たりに直して計算した正社員の給料の半分、3分の1。これでは生活が成り立たない」ということになります。
時給1,000円は、未経験者に出すレベルの金額です。これで、まともな人に来てもらおうというのは厚かましすぎます。
で、結局、「未経験者可」「職場の先輩がお教えします」の求人広告を見て応募したような人ばかり派遣されてくることになります。
【人材派遣会社がやらなければいけないこと】
・本来は
先に挙げたように、日ごろからスキルと経験を持っている人を確保しておくのが第一です。
その上で、企業側からの申し込みがあったら、そのリクエストに合った人を選びます。
リクエストは派遣社員(求職者)側からもあります。「時給はいくら以上」「自分の持っているスキルや経験が生かせる職場」「通勤は◯分以内」「勤務日・勤務時間は……」などなどです。
「この会社にはこの人が適している。この人にはこの会社が適している」と判断します。「派遣先と派遣社員のマッチング」ということです。
そして、送り込んだ後は、その両者がやりやすいようにフォローします。たとえば、「職場で派遣さんが孤立してしまった。イジメに遭っている」「派遣先がほかの仕事を任せたがっている」「作業の安全性に問題がある」といった場合に、間にはいって調整します。
マッチングだけならば、職業紹介会社でもやらなければいけないことです。フォローこそが人材派遣会社の仕事です。これがなければ、中間マージンを取りつづける理由もありません。
・現実は
マッチングもフォローもやりません。
求人広告を出して、人をかき集めます。本来は自分のところで採用・不採用を決めるのが人材派遣の形ですが、それもやりません。「事前面接」というかたちで派遣先に任せています。
派遣先が法律で禁止されている事前面接をあえてやるのは、「人材派遣会社は、まったくマッチングなしで送り込もうとしている」と気が付いているからです。「そんな人をそのまま受け取るわけにはいかない」というわけです。
もはや、人材派遣でも何でもなく、「求人広告代行業」程度のものでしかありません。
それでも人材派遣会社を使うのですから、派遣先企業にもなにかメリットがあるはずです。
考えられるのは、「自分のところでパートやアルバイトを募集しても人が確保できない」や、「パート・アルバイトならば、もし、使い物にならなければ、採用の担当者らの責任になる」です。
人材派遣会社に任せると、自分のところ名前は出さないまま求人広告を出してくれます。そして、応募者が「あれよ、これよ」といっている間にどんどん話を進めてしまいます。はっきりいって「ダマして連れてくる」に近い状況まであります。
これならば、どんなに魅力のない会社、もっといえば悪評の立っている会社でも、とりあえず人を来させることはできます。
それで来た派遣さんに不満があれば、とりあえずはその派遣さん自身に辛く当たったり、人材派遣会社の悪口でもいっておけば、社内の人同士の関係には傷にはなりません。
【派遣社員がやらなければいけないこと】
・本来は
ここまでに何度か出ていますが、派遣社員が価値を持つためには、派遣先が尊重するスキルや経験が必要です。
「未経験者可」「職場の先輩が優しくお教えします」といった求人になっている段階で、すでに本来あるべき人材派遣からは外れています。
そのスキルとしては、事務系ならば、ワード・エクセルといったパソコン操作、語学、法律関連などが比較的わかりやすいものでしょう。といっても、「それで有利になる」というよりは、「それがないと話にならない」として扱われるような場合もありますが。
工場系になると、今度は「ある程度どこでも必要とされるスキルや経験」となると、なかなか難しいでしょう。また、専門的で大掛かりになれば、派遣社員に任せるよりもコンサルティング系の会社などを使うでしょうから。
また、「そのスキルや経験をどこで積むか」の問題もあります。人材派遣会社でいくらかは研修などをする場合もあります。ですが、「当面の役に立つ」程度であって、その人のキャリア形成になるほどのものは聞いたことがありません。
「スキルも経験も、いったんは正社員となって、その企業の中で見つける」ぐらいしか答えが見つかりません。
・現実は
以前ならば、選ぶも努力するもなく、周りに合わせて動いているだけでも、多くの人が正社員になりました。ところが今は、正社員の採用がどんどん減っています。その分を派遣社員などに置き換えているのです。
国が出す統計などでも、「20代の人のうち、正社員で働いているのは約半分。残りはパート・アルバイト、派遣社員などの非正規雇用」と出ています。
「自分のところで、正社員を採用し、その人を一人前になるまで育てるのはやりたくない。どこかに、よそが育てた人が転がっていたら、それを拾って安く使いたい」という企業ばかりです。
どこの企業もこれをやれば、どこにも一人前の職業人に育った人はいなくなってしまいます。これはもはや、個人だけの問題ではなく、産業界全体の問題ですが、このサイトのカバーする範囲を超えますので、ここまでにしておきます。
非正規で働いている人は「非正規も珍しくなくなったから」といって、そこに安住するべきではありません。30代40代と進んでもスキルとも経験ともいえない程度のものが積み重なるだけです。
また、正社員として就職すれば、どんな会社でもスキルや経験にプラスになるわけではありません。組織人の基本中の基本である「報連相」も全くない企業もあるぐらいですから。
「たとえどんなに入り口は狭くても、まともな企業でいったんは正社員となって、きちんとした新人教育を受ける」ということを目指す必要があります。どんなに入り口が狭くなったにせよ、「スキルを見につけ、経験を積む」の第一歩になりそうなものはそれぐらいしかありません。そのまま正社員でいくにしても、ほかの形をとるにしても、おそらくは不可欠なものになるはずです。
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それでも人材派遣会社を利用するなら
「求人内容と実際の仕事内容が違う」などのトラブルは、「どうせその程度のもの」と割り切る
あまりにひどい派遣先に当たったら、法律を使って堂々と退職する。基本となる法律は目を通しておく
非正規(パート・アルバイト、派遣社員)から正社員になるには
非正規雇用は長くは続けない。20代で一度は正社員とならないと、新人教育を受ける機会を逃す
就職サポートは担当者次第。業者の評判がいい悪いには関係なく、ハローワークまで含めて、信頼できそうな担当者を探す
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