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守られることのない労働者派遣法が、さらに内容を緩められようとしている
労働者派遣法はザル法だ。内容に不備がある。なのにこれをさらに緩めようというのが厚労省の基本的なスタンスだ。
今(2013年12月中旬)話題になっている労働者派遣法の改正を伝える記事の中でも、その問題点を指摘している。
が、それ以前に現在の内容でさえ、多くの派遣先は守っていないことは覚えておく必要がある。
【労働者不利、派遣先の有利の改正が検討されている】
この記事は東京新聞HPの『派遣 全職種無期限に 非正社員化進む懸念』(12月12日)。
今は「専門26業種」として指定されている特殊なもの以外は、派遣先が派遣労働者を受け入れる期間は「原則1年、労働組合など職場の過半数が代表する者が認めれば3年」となっている。
今は「派遣労働者を使うのはあくまで一時的な人手不足解消策。本来は直接雇用の人間を置くべき」というのが基本的な労働者派遣法の考え方だ。
これを「労働組合などが認めれば、別の人間に入れ替え、3年ずつ延長可。事実上無期限へと変更する。あるいは最初から無期限での契約も可能にする」というのだ。
「安くて首を切りやすい労働者をずっと使っていい」ということだから、一方的に事業者(派遣先)に有利になるのは言うまでもない。
折りたたむ
【今でさえ「反対された」「意見聴取をしなかった」でも、派遣期間延長】
まずは、どう「現状でさえ、派遣労働者の受け入れ期間が守られていない」か。
ちなみに、この期限の来る日のことを「抵触日」という。
で、2005年に厚労省が派遣期間を「3年」としている事業所にとったアンケートがある。
で、回答が……
①「(組合などが)賛成であったため定めた」=119社(60パーセント)
②「反対であったが定めた」=17社(9パーセント)
③「意見の聴取を行わなかった」=56社(29パーセント)
④「不明」=4社(2パーセント)
……となっている。
つまり、事業所(派遣先)のうちの1割が職場の反対を無視、それ以外の3割は手順を踏んでいないことになる。
アンケートの古さが気になるが、これしかない。この事実自体が、厚労省が真剣に状況を把握する気がない証拠になるだろう。
【取締官庁に対して違反をわざわざ答えるのは、法律すら分かっていない証拠】
おそらくは実態はこれを上回るひどさだろう。
まず、このアンケート。ほかにも質問項目があって色々な質問項目があるが、事業所からの回収率が約1割しかない。
つまり「答えたくないところがほとんど」と考えていい状態だ。
しかも、この「抵触日の無視」は労働者派遣法に当たる。で、アンケートをしたのが取締官庁である厚労省だ。
つまり、学校の先生が「この前のテストでカンニングをした人はいますか」とか、警察が「近所のスーパーで万引きをしたことがありますか」と尋ねているのと一緒だ。
つまり、「反対であったが定めた」などと回答した事業所はよほど無警戒か、あるいは労働者派遣法の内容を知らなかったところだけだろう。
実際には過半数を軽く超えていても驚きはない。
何よりも私が派遣で働いたときに、「就業条件明示書」では「抵触日」は空欄のまま放ったらかされていた。
【記事の中にも、労働者派遣法違反の話に気が付かないまま出ている】
この続報として出た『「非正規 増やさないで」 派遣法改正反対 日比谷で集会』(12月14日)にも見逃せない記述がある。
「今年三月に、派遣切りに遭った埼玉県新座市の酒井桂さん(42)は、派遣法見直し案への不安を訴える。
パルシステム生活協同組合連合会に3か月ごとの契約更新で7年勤めてきた。正社員と同じ一般事務を担当。だが派遣の酒井さんには賞与もなく、交通費も支払われなかった。改善を求めたら雇い止めされた」
すべて問題だが、とくに「契約更新で7年勤めて」と「一般事務」。
「一般事務」は専門26業種には入らない。つまり、1年ないし3年の期限を超えては職場は頗年労働者を受け入れることができない。つまり違反状態が4年か6年続いていたことになる。
記者は気が付いていないのか、話が逸れるからわざと触れなかったのかは分からない。
いかに労働者派遣法違反がありふれているかの実例として挙げさせてもらう。
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