- TOP
- 労働者側がどんどん不利になるわけ
- 人材派遣と国・産業界
- 使えない派遣社員ばかり来るのは
- 「派遣社員をやめさせたい」は、だれにいう?
正社員側のキーマンは「派遣先責任者」
【ただの愚痴で終わらせたくないのならば、相手を間違えないこと】
「派遣社員が来たけど、全く役に立たない」「右も左もわからんようなやつが送り込まれてきた。そいつの面倒を見るのに人手を割くことになる。むしろ邪魔」……正社員側の不満もよく目にします。たいていは、「どうやったらやめさせることができるのか」といったところに話が行きます。
ちゃんとポイントを押さえて、「だれの責任でそうなったのか」を知っておきましょう。その上で、働きかけるべきところに働きかけましょう。
でないと、あなたの不満は解消しないし、これからも繰り返されるでしょう。それをせずに、派遣社員に対して辛い態度で当たっているのならば、それは八つ当たりやいじめそのものです。
そのポイントをピックアップします。
・派遣社員はあなたの会社(派遣先)が雇っているわけではない。人材派遣会社(派遣元)が雇い、派遣先に送り込んでいるだけ。だから、「来ないようにさせる」のほうが考え方として正確。また、その判断は最終的には人材派遣会社がする。
・あなたの会社、つまり派遣先にいるのは、指揮命令者(派遣社員に日々の仕事上の指示を与える役目)と派遣先責任者(派遣社員と指揮命令者を監督する立場)。この指揮命令者と派遣先責任者は一人が両方を兼ねるのも可能。
・人材派遣会社にいるのは、担当者(「営業」さんと呼ばれることも多い)と派遣元責任者。
・派遣先と派遣元の交渉事は、派遣先責任者と派遣元責任者の間で行われる。
つまり、その派遣社員がもう来ないようにするため、あなたがやるべきことは、「自分の会社の派遣先責任者(多くの場合、人事部長、支店長など)に働きかけ、派遣元責任者に申し入れてもらう」です。
折りたたむ
【自分の会社の経営陣に文句を言わず、派遣社員にいうのならば、それは八つ当たり】
それをせずに、派遣社員に直接文句をいうなど圧力をかけると、それは間違いなく「パワハラ」の類です。
それで実際に派遣社員を追い出すのに成功するかもしれません。
ですが、そんな会社、どう考えても社内の雰囲気がいいはずがありません。すでに、パート・アルバイトに限らず、正社員でも人材確保に苦労しているはずです。
これをさらに悪化させることになります。派遣先の名前を隠し、だますように人を連れてくる人材派遣会社にますます頼るしかなくなってしまいます。
そもそもそんな人材派遣を導入すると判断・決定したのは、あなたの会社の経営幹部です。「派遣社員が来たせいで、自分の負担が増えた」「職場の仕事の効率が悪くなった」のであれば、責任を問うのはその経営幹部に対してのはずです。
【人材派遣は本来はどういうシステムか】
「人材派遣が役に立たない」「派遣社員が来ると、職場が混乱する」のは、人材派遣というシステムもさることながら、本来の人材派遣とは違う、インチキな使い方をされているからです。
そのインチキな使い方をしているのは、人材派遣会社だけではなく、派遣先もグルです。
まず、法律の上で「人材派遣」という言い方はありません。「労働者派遣法」というように、すべて「労働者」です。それを何かスキルでも持っているように勘違いさせるために、「人材」と言い換えているのです。
人材派遣会社の取り分は、一般的には30パーセントか、それよりも多いです。つまり、派遣先が派遣料金として時間あたり1,500円出せば、人材派遣会社の取り分は500円、派遣社員には時給として1,000円ということです。
派遣社員が派遣先で、1,000円稼ぐのに、正社員らからやいのかいのいわれ、汗も流しているのに、遠方にいて、めったに様子も見に来ない人材派遣会社が500円もらえるのです。
「これでは世の中の役には全く立っていない。人材派遣会社を楽させ、肥え太らせているだけ」と断言していいでしょう。
本来ある人材派遣の形は……
企業側にすれば、特定のスキルを持っている人が短期間だけ必要になることがある。あるいは、すぐに欲しいと思っても簡単には養成できないような種類の人材がいる。そういった人たちを用意していて、必要に応じて出すのが人材派遣会社。そのためには、人材派遣会社は自分のところの派遣社員のスキルを高めるための研修などを日ごろからやっておく。また、送り込んだ後は、その社員が働きやすく、能力を発揮できるようにサポートする
……といったものです。
早い話が、「企業に対して即戦力を用意し、派遣社員に対しては即戦力として能力を発揮できるようにサポートする」というのが人材派遣です。
これならば、派遣先企業にも、派遣社員にもプラスです。また、それだけの役割を果たすのならば、人材派遣会社も自分たちの取り分をしっかりと確保しても文句はいわれないでしょう。
ところが今普通に見られる人材派遣会社は、派遣先が必要な種類の人かどうかはお構いなく、「とにかく人数を送り込んで派遣料金を受け取る」というだけが関心事です。送り込んだ後のサポートもまずはありません。
一方の派遣先も、「とにかく人が欲しい。どんな仕事をやってもらうかは、人が来てから考える」というところが少なくありません。おそらくは、「どんな人が欲しい」「仕事の内容はこう」というもの、人材派遣会社に対して適当に伝えているだけでしょう。
【どの企業も自分のところで人材育成に力を入れなくなったのだから、よそから人材が来ることもない】
派遣先にしたら、まずやるべきことは、「どんな人に来て欲しいかしっかりと人材派遣会社に伝える」「欲しい人材と違う人・仕事には合わない人が来たら、人材派遣会社に突き返す」です。
ただし、それならそれで、しっかりとお金を出さなければいけません。時給が1,000円やせいぜい1,500円で即戦力が来ると思っているのが甘いのです。
正社員側の給料も時間あたりに計算し直して比較すれば、派遣社員の側のほうが高くなるのが当たり前です。長期の雇用は保証されていないし、福利厚生も対象外、ボーナス・退職金もありません。仕事がなく、給料がもらえない期間もできるですから。
そんなことをやっている派遣先は、かなりの例外でしょう。現実には……正社員の3分の1、それ以下の人件費(給料だけではなく、福利厚生などまで含めた額)で、要求だけは正社員並み。しかも、しかも人材派遣会社に丸投げしているので、社内のだれも責任をとらない……といった状況です。
今、どの企業も、「社内での養成は放棄して……」の状況です。その分を派遣社員などで、安く間に合わせようというところばかりです。「どこもかしこも、自分のところでは人材を養成しない。だけどよそからもらいたい」では、どこかに必要な人材が転がっているはずはありません。
「人材派遣で来るやつは、どいつもこいつも使えないやつばかり」というのならば……
(1)まずは自分の企業でしっかりと社員教育・組織人教育・職業人教育をする。それが済んだ人たちが会社を離れようとしても、引き留めない
(2)よその会社で育った人を派遣社員で使うときには、ちゃんとその人の生活が成り立つだけの雇用条件(特に給料)を整える
……といったことをまずは自分の会社から始めるべきです。それをやったところだけが、文句をいう資格があります。
|
それでも人材派遣会社を利用するなら
「求人内容と実際の仕事内容が違う」などのトラブルは、「どうせその程度のもの」と割り切る
あまりにひどい派遣先に当たったら、法律を使って堂々と退職する。基本となる法律は目を通しておく
非正規(パート・アルバイト、派遣社員)から正社員になるには
非正規雇用は長くは続けない。20代で一度は正社員とならないと、新人教育を受ける機会を逃す
就職サポートは担当者次第。業者の評判がいい悪いには関係なく、ハローワークまで含めて、信頼できそうな担当者を探す
|
コメント