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- ドクターXは派遣法違反
ハケンの凄腕女性外科医が活躍する話……といっても、派遣のシステムは全く無視
米倉涼子が凄腕の外科医を演ずるテレビドラマ『ドクターX』(テレビ朝日系)。主人公はどこの病院にも属さない“フリーランス”という設定。
第一期は2102年の第4クールで放映され、かなりの高視聴率。この時のキャッチコピーが「スーパードクターは“ハケン”の女」。一年たって、第二期の放送が始まった。
が、これ、どう見てもバリバリの労働者派遣法違反。
【ハケンさんでも、技能が高く売れるのならば、強気にもなれるというもの】
基本的な設定は、一期放映分も、二期も同じらしい。
主人公は、「名医紹介所」から、大学病院に送られる。よそ者扱いされながらも、次から次へと難手術をこなしていく。
当人も「医師免許不要のことは一切しません」と宣言し、まわりとのすったもんだで、毎回の話は進む。
このあたりは技能を高く売りつけ、勝手気ままにやっているのを、「派遣」というイメージにしているみたい。
「雇用調整に便利だから」と使われる安物の派遣労働者とは別物ですな。
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【医療は原則は派遣禁止。例外もあるが、ドラマの設定では不可】
でも、医者は労働者派遣で四つだけ残ったネガティブリストのうちの一つ。つまり、原則禁止。
ただ、例外があって、「紹介予定派遣」「病院・診療所等以外」「産前産後休業などの代替要員」「へき地医療要員として都道府県が認めるもの」は可。
ドラマの設定はどれにも当たらない。
病院が高いお金を紹介所に払い、紹介所がその中から主人公の給料を払う。大学病院の幹部らに逆らったりしながらも、主人公は病院側の指示で動いている。
病院側との仲介料・紹介料ということではお金は動いていない。「職業紹介」ではなく、完全に「労働者派遣」だろう。
労働基準監督署のチェックが入ると、すぐにアウトでしょう、この業者。
【しかも「日雇い派遣」までやっている】
それに第二期の第一話では、腫ようの難手術をやるだけのために送られて、いったんはこれで派遣は完了する。
となると、どう見ても一か月を超えていない。これは「日雇い派遣」となってしまう。2012年秋の改正労働者派遣法施行からはほかの業務も含め、原則禁止されている。
さらに、仕事の話はいつも口頭。岸部一徳演じる名医紹介所所長と、米倉涼子が演じる大門未知子の間で、アバウトなやり取りがあるだけ。
「就業条件明示書」なんて、まったく出てこない。これも法律違反。
【まっ、派遣法違反なんて、現実でも珍しくはない。荒唐無稽(こうとうむけい)を楽しめばいいか】
それと、マージン率も不明。つまり、医師紹介所の取り分が分からない。
「手術を担当した料金1千万円」なんてストーリーにはなっている。
また、大門未知子が紹介所所長から借金をしていて、給料は自動的に返済に回っていることになっている。未知子は金銭感覚がゼロの設定になっているようで、いくらずつ返済に回っているのかも気にしていない。
マージン率はちゃんと説明するように、やはり2012年秋から義務付けられている。
……な~んてこと、気にして見ているやつなんて、いないだろうな。
主人公の荒唐無稽ぶりが痛快に感じる人も多いから、人気も出たのだろう。
それに、「派遣労働者本人すら、派遣法での決まり事を知らない」というのは、よくある話。
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